お寺の未来ブログ

【インタビュー】 真宗大谷派「元気なお寺づくり講座」の担い手に聞く - 大江則成さん

2017年12月15日

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真宗大谷派が推進している「元気なお寺づくり講座」。
今回は、企画調整局次長の大江則成さんに、今までの歩みとこれからの展望についてお話しをいただきました。

(元気なお寺づくり講座の取り組み詳細はこちら)

 

– 真宗大谷派が「元気なお寺づくり講座」を開始した背景理由はどのようなものですか?

2012年に行なった第7回の教勢調査が大きなきっかけになりました。
葬儀や法事が減少した寺院が前回と比べて圧倒的に増えました。そして、報恩講をはじめとした年中行事への参詣者数も減少していることが明らかになりました。これから真宗大谷派はどうすれば良いかという危機感が盛り上がりました。

そして、教勢調査の学習会を30の全教区で行いました。どの地域に行っても不安を感じている寺院が多く見られましたが、果たして本当の危機感と呼べるものか、みなさんが疑問を感じられていました。
漠然としたものではなく、問題意識が明確になった本物の危機感を宗門としてどう共有すれば良いのかという課題が浮かび上がったのです。

 

– 危機感が実際の動きにどのようにつながったのでしょうか?

現場だけでなく、宗務行政の責任者である内局も同じ課題意識を共有していました。

そして、真宗教化センター(しんらん交流館)を建てるタイミングも重なっていました。真宗教化センターの使命は、宗門内外の人と人、情報と情報をつなぎ、親鸞聖人の教えをもとに交流が深まり、人と人が出会い直すことを目指すものです。
大谷派らしく元気に明るく取り組める、地に足のついた施策が何なのかを探求していたところでもあり、今までの教化の素地、ネットワークを活かし、改めて何かできないかと考えていました。

お寺の未来との出会いもあり、様々なタイミングと縁が重なって、「元気なお寺づくり講座」の取り組みがスタートしました。

 

– 「元気なお寺づくり講座」は、宗派の今までの伝統や連続性から見て、まったく新しい取り組みなのでしょうか?それとも何らかのつながりがありますか?

長年にわたる同朋会運動で培ってきた経験の集積が、今の施策を選択することにつながっていると思います。
同朋会運動は門徒参画で、新しい時代にお寺を開き、親鸞聖人の教えを聞き、仏法を広めていくというものです。同朋会運動が培ってきた文化・記憶が、「元気なお寺づくり講座」の根っこにあると感じています。
実際に、「昔、こんなことやってたな」と言われることもありましたし、その時に先輩方のご苦労を感じました。

 

– 「元気なお寺づくり講座」を推進する上での難しさはどのようなものでしたか?

お寺では使わない経済用語に対する現場のアレルギーがありました。元気なお寺づくり講座の参加者には高齢の門徒さんも多いので、講座以前にシャッターを下ろされる可能性もありました。

大谷派の特長として、教えを伝えるためにはどこまでも深くなっても問題ないのですが、経営学の話は難易度にかかわらず受け入れられにくい傾向があります。元気なお寺づくり講座は「お寺の本来化」を軸として組み立てましたが、聞きなれない言葉にどうしてもアレルギー反応があることは否めませんでした。

検討を続け、まだまだ改良していかなくてはならないと感じていますが、一度実施してみて門徒さんに火がつけば、宗門として重要なことをやっているんだと気付いてもらえました。

また、寺業計画書を書くことで、実際に自分たちが変わっていくことを体感していただくことがとても大きかったです。

 

– 「元気なお寺づくり講座」を推進していく上では、教区駐在教導の役割が重要だと感じます。実際にどのような役割を担っていらっしゃるのでしょうか?

この講座の講師は、全国の教区に配属されている教区駐在教導が中心となります。
同朋会運動を推進するために教区駐在教導という役割が置かれているわけですが、その蓄積が元気なお寺づくり講座でもとても活きています。

また、駐在さんが相互に宗門内の横のネットワークを持っていますので、その横のネットワークをうまく使って、講座の推進を助けてもらっています。
横の情報交換で、各教区でどうやっているかを情報共有し、自分の教区だったらこうしたいという意思も各駐在さんに芽生えました。
駐在さん同士のお互いの支え合いは、元気なお寺づくり講座を推進していく大きな要素の一つです。

 

– 「元気なお寺づくり講座」の手ごたえとしてどのようなものをお感じになられていますか?

宗門内の認知度は上がってきました。
「一つの寺、一人の門徒を大切にする教団になる」と宗務総長がおっしゃっています。本山→教区→組という流れで落とされる今までの施策とは違い、教区や現場と連携しながら一ヶ寺に直接働きかけるという姿勢は少しずつ伝わりつつあるのではないかと思います。

内部講師を育成して参加寺院の満足度を上げ、展開力を上げていきたいです。
事例をつくり、仕組み化し、じわっと広げていく。地道さが大切だと感じています。

 

– 現場に前向きな変化はありますか?

前向きな変化としては、教区や組織の目標立てをする際に、お寺を取り巻く環境を見て、大切にしてきた価値を棚卸し、目標設定を行なうという考え方が少しずつ浸透してきています。
共通言語が育ってきていることで、宗門内の話や調整が早くなった側面もあると感じています。

一方、寺院現場に関してはまだ劇的な変化が見えたとは、なかなか言えません。
しかし、動きにつながる切っ掛けに出会い、今までだったらすぐに諦めていたことを、前向きに発想してみる人が生まれてきていると感じることもあります。

ある組で講座を行なった際、組長さんや門徒会長さんが、最後に「受けて良かった」とおっしゃってくれました。
講座の後に開催された門徒推進員養成講座では、「お寺は何をするところか」というテーマで、みんなが持っている気持ちをすくいあげ、その後に仏教を学んでいくステップを踏まれたと聞いています。
お寺という場のあり方をまずは考えるという流れは、元気なお寺づくり講座の成果だと思います。
一つのお寺を超えて、複数のお寺の住職・門徒がつながって、講座自体を引っ張っています。元気なお寺づくり講座を通じて、教化活動につながる組としてのチームビルディングができているのではと感じました。

あきらめず、頑張り続けようとする人は各地にいるので、相互に支え合う横のつながりを作っていきたいです。横のつながりを作っていくことは真宗教化センターの使命ともつながります。

 

– 「元気なお寺づくり講座」のこれからの目指す姿はどのようなものですか?

講座開催については、複数ヶ寺だったらなお良いですが、一ヶ寺から要請があっても講座を開いていけるような柔軟性が求められています。
展開については、仕組み化する中で粗雑にならないように、一つひとつ丁寧に進めていきたいです。一人ひとりの寺族や門徒を思い浮かべながら、とにかく丁寧に進めていきたいです。

お寺を運営維持していくには苦しい状況が続きますが、念仏の教えが、寺族・門徒のみなさんの力で社会に発信され、「仏法広まれ」につながる講座にしていきたいです。

 

– 本日は貴重なお話しをありがとうございました。

 

(元気なお寺づくり講座の取り組み詳細はこちら)

 

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1979年山形県生まれ、東京育ち。一般社団法人お寺の未来代表理事。東京大学文学部中国思想文化学科卒業。東京三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)等を経て、経営コンサルティングのICMG社では日本を代表する大手一部上場企業の経営改革、ビジョン策定・浸透、グローバル経営人材育成等、「人づくり」を切り口に経営中枢への長期支援に従事。未来の住職塾では講師、全体プログラム設計、お寺360度診断開発等を担当。近著に『住職の教科書 基礎編(上・下巻)』。