お寺の未来ブログ

未来の住職塾の講師をご紹介します(2) 『井出悦郎』 〔後編〕

2016年11月19日

来年4月より開講する未来の住職塾第六期の願書受付が始まりました。前後編に渡り、講師をご紹介をさせていただきます。

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井出悦郎


1979年山形県生まれ、東京育ち。一般社団法人お寺の未来代表理事。東京大学文学部中国思想文化学科卒業。東京三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)等を経て、経営コンサルティングのICMG社では日本を代表する大手一部上場企業の経営改革、ビジョン策定・浸透、グローバル経営人材育成等、「人づくり」を切り口に経営中枢への長期支援に従事。未来の住職塾では講師、全体プログラム設計、お寺360度診断開発等を担当。近著に『住職の教科書 基礎編(上・下巻)』。

松本紹圭・井出悦郎 共著『お寺の教科書 -未来の住職塾が開く、これからのお寺の100年-』(徳間書店)より
 
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 経営コンサルタントとして、日本を代表する様々な企業・経営者とのご縁の中で、事業の浮沈と、経営中枢で繰り広げられるドロドロの人間模様を見ながら、「一人ひとりが活き活きと幸せに生き、働ける、組織や社会創りの原理」について、自分なりに探求しました。
  
 世の中が目覚ましいスピードで変化し、商品・サービスがすぐに陳腐化してしまうという現実が、年々加速度的に速まっているということを肌身で実感します。一方、多くの企業のトップレベルのリーダー人材が従来の考え・やり方への執着を手放せない場面をよく見かけるようになりました。また、経営人材育成の内容もスキルに偏重しがちで、「世のため人のため」という理念や、人柄・人間的魅力によって人心を束ねる、大きな器の人間を育てようという意識が日本企業から弱まりつつあるようにも感じました。そのような経験を通じて、世の中の「常なる変化」を前提とした柔軟かつしなやかな心のあり方・生き方を自らの中に育み、主体的に社会や他者に貢献しようとする人材が多く輩出されていくことが、これからの日本社会には不可欠と感じるに至りました。
 そして、「人作り」には処世のスキルよりも人間に関する深い哲学・思想が不可欠と考え、様々な書籍を読み漁りました。哲学・思想に関しては宗教を探求するという発想が自然ですが、宗教と疎遠な生い立ちの影響があり、宗教以外の何かに根源的な考え方がないかと追い求めました。しかし、いくら書物を読み漁っても、我が意を射たりと感じられる人格を陶冶する思想には出会えません。
 
 そのような中、ふとしたご縁で大学の経営をつぶさに見る機会が増え、その中でもとある仏教系の大学との忘れられないご縁が出来ました。その大学とのプロジェクトは、私のキャリアの中でも不眠不休のもっとも忙しい時期だったのですが、何とか時間を見つけてその大学を訪れることがいつの間にか私の楽しみになっていました。その大学を訪れる度に、接するお一人おひとりから、得も言われぬ人柄の良さや優しさ、包み込まれるような温かさや気遣いを感じ、自己中心の価値観ばかりで生きてきた自分の中で、「他者のため」という考え方がじわじわと身体に染み入ってくる感覚がありました。軽々しく仏法とは言いませんが、今思うと、大学関係者の方からにじみ出る何かしらの仏教的なエッセンスによって、当時の私は自身の価値観の変化に向き合っていたのだと思います。この時の経験は、私にとって一つの価値観の転換となり、「仏教というものにこれから時代の人作りに何かのヒントがあるのでは」という直観が芽生えるようになりました。
  
 そして、このような問題意識について、大学時代からの親友の松本さんとの対話を繰り返していくうちに、仏教との距離感が縮まっていきました。とは申しても、私の中では宗教というものを受け入れることにかなりの抵抗感があり、その葛藤と向き合う時期はかなり長く、つらい時間でした。安易に宗教というものに逃げてはいないかと。しかし、葛藤を深めるにつれて、仏教そのものは「人知を超越した神や奇跡を信じるのではなく、人間の意識・認識、ひいては心のあり方を陶冶するサイエンスであり、そのための身体・知性の技術である」という自分なりの理解に至りました。
 仏教は日本社会の歴史・文化との親和性も高く、世界宗教という普遍性もあることから、これからの日本の「人作り」に大きな可能性を秘めていると感じます。特に多様化・多元化する世界の潮流の中で、その思想自体が多様性を内包する仏教は、多様性の交わりの中から新しい次代の息吹を生み出すプラットフォーム(社会基盤)として、今後世界の様々な場面で益々求められていくのではと、率直に思います。
 
 仏教・お寺にとって全くの新参者ですが、よく言えば考え方が凝り固まっていないとも言えますので、一般人ならではの斬新な視点で仏教やお寺の価値について、お伝えしていけるのではないかと考えています。伝統に根差した価値を大切にしながら、これからの時代のお寺の具体像について、皆さんと共に悩み、考え、笑っていきたいと思います。
 
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