お寺の未来ブログ

未来の住職塾の講師をご紹介します(1) 『松本紹圭(塾長)』 〔前編〕

2016年11月11日

来年4月より開講する未来の住職塾第六期の願書受付が始まりました。前後編に渡り、講師をご紹介をさせていただきます。

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松本紹圭


1979年北海道生まれ。一般社団法人お寺の未来理事・未来の住職塾塾長。浄土真宗本願寺派光明寺僧侶。東京大学文学部哲学科卒。世界経済フォーラム(ダボス会議)Young Global Leader。2010年、ロータリー財団国際親善奨学生としてインド商科大学院(ISB)でMBA取得後、2012年、お寺運営を学ぶ「未来の住職塾」を開講。著書多数。近著に『住職の教科書 基礎編(上・下巻)』。

松本紹圭・井出悦郎 共著『お寺の教科書 -未来の住職塾が開く、これからのお寺の100年-』(徳間書店、2013年)より
 
◇◇◇
  
 みなさんこんにちは。未来の住職塾塾長の松本紹圭と申します。私はお寺の住職でもなく、跡継ぎでもありません。僧侶としての経験も、まだたったの10年ほどです。こんな若僧に、お寺の未来を語る資格があるのか? そう思われるかもしれません。こんな私がなぜ未来の住職塾を開くことになったのか、そこからお話ししたいと思います。
 
 私はお寺の出身ではなく、北海道の一般家庭で生まれ育ちました。いわゆる「在家出身」の僧侶であり、世襲の多いこの世界としてはどちらかというと少数派です。とはいえ、お寺とご縁がまったくなかったわけではありません。母の実家はお寺であり、母方の祖父が実家の近所で住職をしていたため、私にとってお寺はとても身近な存在でした。
 なぜお坊さんになったか。一言でいえば「お寺を変えたい」という思いからです。幼い頃に祖父から仏教の本を借りて読んでいたので、自然と仏教が好きになりました。しかし一方で、孫の目線から見ても現代のお寺の活動は活発とは思えませんでした。行事からも仏教の良さがあまり伝わって来ないし、何より地域社会に向かって開かれていないように感じていました。
 たまに町へ出て本屋さんへ行くと、いつも新宗教系の本が平積みになっていました。伝統仏教に親しんでいた私にとってはとうてい受け入れられない内容のものもありましたが、そのような本がランキングに入る状況を招いている責任の一端は、伝統仏教界の布教力の弱まりにあるのではないかと思うようになりました。私の身の回りを見ても、親族や友人で新宗教へ惹かれていく人は少なくありません。もしも伝統仏教がもっと社会に開かれていて、新たに宗教を求める人たちにとって身近な選択肢となっていたならば、彼らが人生の迷いを深めることもなかっただろうにと、悔しい思いをすることも何度かありました。
 そして、その思いがだんだん強くなり、「お寺を変えたい」という勝手な使命感から、大学卒業と同時にお寺の世界に飛び込みました(その頃の様子は『おぼうさん、はじめました。』という本にまとまっております)。それ以来、僧侶としてのあり方を学びながら、歴史・伝統という壁の高いこのお寺の世界に変革を起こそうと日々、奮闘しております。

 さて、私が僧籍を置く光明寺は日比谷線六本木駅と霞ヶ関駅の間、神谷町にあります。大学4年の頃に「よし、卒業後はお寺に入ろう」と心に決めたのですが、どうやって入ったらいいのか分かりませんし、就職求人サイトにもお寺の新卒募集はなさそうでした。そこで、まずは友人づてに「どうやってお坊さんになれるのか」の話をお寺へ聞きに行くことにしたのですが、たまたまそのお寺が光明寺だったわけです。
 最初はお寺に住み込みで、掃除やお経を習うところから始めるのですが、個人的にはとにかく本堂、お寺の空間が気持ちいいなという第一印象でした。そのうち、もっと多くの人に来てもらいたいという思いが強くなりました。でも「どうぞ、お寺へお参りに来てください」と今どきの人に言っても、何をしていいか分からないですし、来ないですよね。そこで、境内の一角を「神谷町オープンテラス」という”お寺カフェ”として開放する取り組みを始めました。
 「カフェ」の雰囲気をお寺に持ってきて、「カフェに行くみたいにお寺で過ごしてください」というメッセージを発信したわけです。間もなく近所で働く人たちたちの人気の場所となり、お昼時には満席、行列のできるお寺となりました。
 でも、もちろん、お寺はカフェとは違います。実際にはカフェのようにメニューがあるわけではないですし、オープンスペースで持ち込みは自由、もちろん料金はいただきません。仕事の合間にふらっと立ち寄り、少し休んで、帰り際に仏さまに手を合わせていただくというのが理想です。常連さんになる方も多く、そういう方は結果的に毎日お寺参りをしているわけです。
 事前にご予約された方は、ご希望に応じて担当のお坊さんにお茶や手作りのお菓子でおもてなししてもらえます。当時、なかなか就職先が見つからずにいた友人にお願いして“店長さん”になってもらったのですが、数年続けるうちに気がつけば彼もお坊さんになってしまいました。いまではお坊さんとお話しがしたいということで、訪ねて来られる方も多いです。
 お寺というのは伝統的に、その土地のコミュニティの中心としての役割がありました。現代のように都市化が進む社会には、それに見合ったコミュニティの作り方というものがあるはずです。たとえば神谷町というビジネス街であれば、住んでいる人より働きに来る人の数が圧倒的に多いので、そういう方々とのご縁の持ち方というものを新たに考えてみることもできるのです。
 その結果、落ち着いたのが「お寺カフェ」というかたちです。新しいことをしているようですが、結局やっていることといえば、お参りに来られた方に「ようこそようこそ」とお茶やお菓子でおもてなしをする、それだけなのですね。お寺の原点回帰です。
 
 他には、「お坊さんのホームパーティ」のコンセプトで、友人たちと「誰そ彼(たそがれ)」というライブイベントを年に2〜3回ほど開いています。毎回違ったミュージシャン(海外から来ることもあります)の演奏を本堂で聴いて、テラスで料理とドリンクとともに人との交流を楽しみ、合間にお坊さんの法話、イベントの最後にお客さんみんなで読経をします。これもまた、ご縁をつなぐコミュニティの場、文化の発信基地としての昔のお寺の役割を取り戻す試みです。
 他にも、私が僧侶になってすぐ書き始めたブログが発展して、超宗派のお坊さんが集まるインターネット寺院、「彼岸寺」となりました。仏教に関するさまざまな情報発信をしているわけですが、もちろん、インターネット上でお寺の活動がすべて完結するということはありません。やはり、本当に大切なことは人と人が同じ空間を共有してこそ伝わるもの。彼岸寺を通じて仏教への思いを同じくする人と人とがつながり、まったく新しい仏縁が生まれることを目指しています。
 
(後編に続きます)

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